ゴー・アヘッド!

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【小説】狸と魔法使い

 ある所に、一人の狸がおりました。

 狸には仲間が居ません。
 仲間が欲しくても、勇気が出ずに一歩を踏み出せないからです。
 狸は思います。

「一緒に笑い合える、仲間が欲しい」と。

     ◇     ◆     ◇

 ある日の事。
 今日も狸は独り、いつもの場所で狩りをしていました。
 狸は思わず独りごちます。

「……孤独だ」

 そして、狸は思います。

「一緒に笑い合える、仲間が欲しい」と。

 そんな狸の元に。

「呼ばれて飛び出てですですのー☆」

 辺りが突然光に包まれたかと思うと、その中から一人の羊が現れました。

「あなたは誰?」

 驚き問いかける狸に羊は答えます。

「私は魔法使い。あなたの願いを叶えるですの」

 魔法使いの言葉に狸は、半信半疑ながらこう願います。

「僕は……僕は、仲間が欲しい」
「お安い御用ですの」

 頷いた魔法使いは呪文を唱えます。

「――、――」

 高く、低く、謡うように。
 長い長い、呪文を唱えます。

「――――」

 歌のようなリズムに乗せて、魔法使いが呪文を唱え終えました。
 けれど、何も起こりません。
 怪訝な顔をする狸に魔法使いはこう告げます。

「効果は、明日になれば分かりますの」



 次の日。

 狸は魔法使いと一緒に、メガロポリス広場を歩いていました。
 いつもは独り。今日は二人の、狩場への通り道。

 と、そこに。

「ちょっとそこのお二人さん、ストーップ!」

 声をかけられ、振り返った先には一人の兎と、一人の獅子がおりました。

「丁度良かったお二人さん。ちょっとあたし達に付き合ってよ」

 兎の言葉に狸は首を傾げます。
 兎は言いました。

「これからイベントをやるんだけど、参加資格が四人で一チームなのよ」

「俺達は二人だから、あと二人、チームを組んでくれそうな人を探してたんだ」

「お願い、助けると思って」

 手を合わせる兎。狸はちらりと魔法使いの方を見ました。
 笑顔で頷く魔法使いを見て、狸も頷きます。

「僕達で良ければ、喜んで」

 狸の言葉に、兎と獅子は手を取りあって喜び。狸も何だか嬉しくなってくるのでした。



「そう言えば。イベントってどんなイベントなんだ?」
「それはね――」

 首を傾げた狸に、兎が人差し指を立て得意げに説明しました。

 これから行うイベントは人探し。
 ヒントを元に審判を探して、四人全員が審判の所に辿り着けばゴールです。

 渡されたヒントは「石段の下」。
 四人は皆で連絡を取り合いながら、ゴールを探します。

『いた?』
『いや、見つからない』
『こっちも』

 審判を探して西へ東。
 やがて、狸が入り込んだカバリア遺跡の中。
 暗くて涼しい石段の下、審判の格好をした狸を見つけました。
 狸は急いで連絡します。

「審判を見つけました。カバリア遺跡の中です」
「了解」「すぐ向かうね」

 合流した四人は、持っていた参加賞に判を押して貰います。

「やったね!」「いえーい!」

 判の押された参加賞を片手に、獅子と兎はハイタッチ。
 狸に振り返るとそれぞれ左手と右手を上に差し出します。
 怪訝な顔をする狸に二人は言いました。

「ほらほら、狸さんも」「ハイタッチハイタッチ!」

 狸は困った様子でしたが、二人の期待の目には敵いません。
 一つ息をつき、狸は両手を上げました。

「よくやった!」「ありがとう狸さん!」

 笑顔で二人とハイタッチ。狸は照れているようでしたが、その顔はとても嬉しそうに笑っていました。



「じゃーね」「またー!」

 イベントも終わり、帰り道。
 獅子と兎が手を振りながら去っていきます。
 狸の手には携帯電話が握られていました。
 まっさらだったリストには、今は二つの名前が。
 帰り際に、二人が自分の連絡先を教えてくれたのです。

 二人の姿が見えなくなってから、狸は魔法使いに問いかけました。

「これが魔法の効果なのか?」

 狸の言葉に、魔法使いは悪戯っぽく笑うとこう言いました。

「ええ。――でもまだまだ、こんなものじゃありませんですの」



 マラソン大会が終わって、数日もしない内。
 狸は先日知り合った兎に呼び出されて、パラダイスに向かっていました。
 パラダイスに着くと、見知った兎と獅子、それに見知らぬ人達が何やら話をしています。

「お、来た来た」

 二人に気づいた兎は手を振って、話していた人達の方へ招きました。

「紹介するね。この人がさっき言ってた狸さん。あたし達の勝利の女神!」
「女じゃなくて男だから……男神じゃないか?」
「いーじゃないの、細かい事は」

 そんな事を言いながら、兎と獅子の二人は狸と魔法使いを自分の前に立たせました。
 こちらを見ていた人達が、思い思いに挨拶をします。

「……こんにちは」

 狐が小さくこちらに手を振ります。

「何だ、ひ弱そうなヤツだな……うぉい、この俺様の目の黒い内はゲブゥッ」
「初対面の相手を威嚇するな、馬鹿者」

 歯を剥いて笑う牛を、龍がチョップで黙らせました。

「あら、結構男前じゃない。わたし好みだなー」

 寝そべっていた猫が目を細め、悪戯っぽく言うので狸は思わずドキドキしてしまいます。

「これがあたし達の仲間。そして」
「今日から君も、俺達の仲間」

 どう?と問いかける言葉に狸は驚き、嬉しいのと同時に困ってしまいました。
 今までできなかった仲間が、こんなに沢山一度にできてしまうのですから。

 助けを求めるように、狸は傍らの魔法使いを見ました。
 魔法使いは柔らかく微笑み、言いました。

「お膳立ては整えましたの。最後の一歩は、貴方の意志で踏み出して欲しいですの」

 その言葉と、笑顔に後押しされて。
 狸は緊張した面持ちで一言、告げました。

「ええ。これからよろしくお願いします」

 狸の言葉と同時に、周りの皆が喜びで沸き立ちます。
 狸はちらと傍らを見ると、魔法使いの手を引きました。
 魔法使いはびっくりしたように目を見開きましたが、すぐに微笑むと狸に並びます。

 こうして、狸は新しい仲間の輪の中に入ったのでした。



 その日からの毎日は、今までの毎日よりもずっとずっと楽しいものでした。
 バカ話をしたり、悩みを相談したり。
 時にはケンカもするけれど、お互いに「ごめんなさい」の言葉でまた笑いあって。

 狸は幸せでした。
 だから、自分を幸せに導いてくれた魔法使いにお礼を言おうと思ったのです。

「ありがとう」

 人気の少ない場所で、少しだけ照れながら言った、狸の言葉。
 けれどもそれは、別れの言葉だったのです。

「……言ってしまいましたのね」

 魔法使いは一言、そう言いました。
 何の事だか分からず困惑する狸に、魔法使いは説明します。

「私は魔法使い。人の願いを叶えるのが役目ですの」

 魔法使いは悲しげに瞳を伏せます。

「本当は、あなたをあの人たちに巡り合わせた時点で私の役目は終わっていましたの。けれど……」

 ――あなた達と過ごす日々は楽しくて。もう少し、もう少しだけと別れを伸ばしていましたの。
 魔法使いはそう言いました。

「……それも、もう限界ですの」

 魔法使いが顔を上げます。
 どこか悲しげで、どこかほっとしたような表情で魔法使いは言いました。

「お礼を言われたという事は、もうあなたの願いが叶ったという事ですの。だから……」

 魔法使いはそう言うと、狸に笑顔を見せました。

「……さようなら、ですの」

 魔法使いは振り返り、行ってしまいます。
 その姿が徐々に遠くなり、

「待って!」

 思わず、狸は呼び止めてしまいました。
 魔法使いと一緒に居たい。狸はそう思ったのです。

 どうすれば魔法使いは去らずに済むのだろう。狸は考えました。

「僕はあなたに願いました。仲間が欲しい、と」

「あなたは、僕の――」

「僕達の、仲間じゃないんですか」
「……それは」

 小さな声でした。

「仲間でありたいと……思いましたの」

 振り返ったその顔から、真珠が一粒、二粒と落ちていきます。

「私も……あなたと。あなた達と一緒に、いたいですの……」

 魔法使いは狸に駆け寄り、狸は魔法使いを優しく抱き留めました。

 すっかり静かになった夜空に、魔法使いの泣き声が吸い込まれていきます。
 狸はそんな魔法使いの頭をそっと、そっと撫で続けたのでした。

 翌朝。
 魔法使いは狸の前から消えていました。
 そして、その日以降。狸と魔法使いが出会う事は、もう二度とありませんでした。



 それから、暫くの時が過ぎました。
 新たにできた仲間との楽しい日々。
 あの日から仲間の数は更に増えて、一日一日がちょっとしたお祭りのようです。

 そんな昼下がり。
 狸は独り、大きな銅像の前で立っていました。
 落ち着かない様子で、誰かを待っているようです。
 待ち人は、すぐにやってきました。

「ごめんなさい、お待たせしましたの」

 そう言って走ってきたのは、一人の羊の少女。
 狸は笑顔で首を振ります。

「いいえ。僕も今来たところだから」

 待ち合わせをしていた二人は、仲間の所へ歩き始めます。
 と、狸が口を開きました。

「……本当に、良かったのかい?」
「何がですの?」
「魔法使いじゃなくなった事」

 狸の質問に、羊は悪戯っぽく笑うのでした。

「私は微塵も後悔してませんの。だって、他人の願いを叶える魔法使いは――」

 ――最後に、私自身の願いを叶えたんですから。

 羊の言葉に狸は優しく微笑んで。
 二人は仲良く仲間の所へと向かいます。

 のんびりした歩幅で、きっと二人、いつまでも一緒に。



 おしまい。











 読了いただき、ありがとうございます。
 何故だか急に良い話を書きたくなって、気付けば筆の赴くままに書いていました。
 この作品が貴方にとって、良い話である事を願っています。

 それでは、また次の作品で。
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  1. 2006/12/01(金) 01:46:54|
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