ゴー・アヘッド!

へたれ文章家、ウェアホースとその周りの人々が織り成す、ドタバタ冒険愛憎活劇(嘘) banner.jpg

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【小説】未成年者の飲酒・喫煙は法律で(略)

 海中都市アクアリースに存在する、アクアリースホテル。
 ホテルに隣接した酒場では、今日も疲れを癒す為に大勢の客が訪れていた。
 酒場のそこかしこでは笑い声が上がり、酒を片手に愚痴を言う男の声や自慢話をしているらしい男の陽気な声がしじまのように寄せては返す。
「ねーちゃん、エールを一つ追加だ」
「はーい!」
「こっちにも、大至急でなー!」
 次から次へと追加される注文に、この店の給仕であるマリエルはお盆を手に慌しく店内を走り回っている。
 カウンターの中ではこの店の女主人、ソフィアが慣れた手つきでグラスに琥珀色の液体を注ぎ、つまみの用意をしていた。
「頼んだ料理、まだ来てないんだけど?」
「はいはい、分かったからちょっと待ってて!」
 忙しさで余裕が無くなったのか、それともいつもの事なのか。声をかけた客に乱暴な言葉遣いで返し、マリエルは盆に載せた酒のジョッキを店の一角へと持っていく。
 人の多い酒場の中で、その場所は更に人の密度が高い。マリエルは人々の間をすり抜けるようにして内側へと入っていく。
 周りを取り巻く人々の中心には楕円形のテーブルが置かれ、そこに体格の良い牛の扮装をした男と、龍の扮装をした男が並んで座っていた。彼らの眼前には空になったジョッキが何個も並んでいる。置かれたジョッキの数は牛の男の方がやや多いようだ。
 二人が空けているのは、共に琥珀色をした洋酒だった。
「どうした、もう終わりか?」
 ジョッキを空けていた牛の男が、先ほどから酒を飲む手が止まっている隣の龍の男に言った。龍の男はその言葉にジョッキの中身を猛然と空けていく。おお、という声が上がる中、龍の男は手にした一杯を一息で全て飲み干した。
 龍の男がジョッキをテーブルに叩きつける。観客達の期待の視線の中、一瞬の静寂が生まれ、ややあって龍の男は悔しそうに言った。
「……もう、限界だ」
 龍の男の言葉に黒いスラックスにシャツ、更には蝶ネクタイという出で立ちのいかにも審判風の格好をした狸の男が牛の男の片腕を取り、高々と掲げた。
「勝者、ガードン!」
 瞬間、周りを囲んでいた観客が一斉に歓声を上げた。
「凄ぇ……」
「これで何連勝だ? よくもまぁ毎日毎日……」
「底無しかよ……」
 勝者に対する歓声や対戦相手だった龍の男の健闘を称える声の中、そんな言葉がそこかしこから聞こえる。
「流石ガードンさん! これで二十九連勝目ですよ!」
 ガードンと呼ばれた男の取り巻きらしい獅子の少年が興奮気味に言った。ガードンは少年の方を向いて当然だ、と笑う。
「飲み比べじゃ誰にも負けないさ。そこいらの連中とは出来が違うからな」
 ガードンは得意げにそう言った。
「今日は調子が良いからな。もう一戦やって、今日中に三十連勝と洒落込もうか」
 上機嫌にそう言って、ガードンは新たな対戦相手を探して辺りを見回した。しかし今の戦いを見ていた者達は自分達では勝負にならないと思ったのか、名乗り出る者はおろか、誰もガードンと目を合わせようとしない。
 ガードンはそんな一堂を見回し、
「ったく、つまんねーな」
 興ざめしたように言うと、舌打ちをして席を立とうとした。その時、
「あの……」
 遠慮がちにガードンに声をかける者がいた。ガードンが声のした方を見ると、そこに居たのはやや細身の、狐の扮装をした少女。少女は外見に似合った細い声で、
「私と勝負していただけませんか?」
 少女の言葉に、ガードンが目を丸くした。
「勝負? アンタが、俺と?」
 確認するように言って、ガードンはハ、と笑いの形で息を吐いた。
「面白ぇじゃねえか」
 ひょろりとした体躯に、色白の肌。目の前の少女、どう見ても酒が強いようには見えない。
 あるいは先ほどの勝負で、こちらが酔っていると思ったのか。確かに先ほどの勝負で飲んだ酒は身体に残っているがまだまだ余裕、目の前の少女に対してはハンデにもならない、とも思う。
 けれどまぁ、折角挑まれた勝負、請けないのは男が廃る、とガードンは少女に隣の席に座るよう促した。席に着いた少女にガードンはルールを説明する。
「酔い潰れた方の負け。負けた方は酒代を全部持つ。それでいいな?」
「はい、分かりました」
 狐の少女が頷く。
 観客達が前の戦いで残ったグラスやら何やらを片付け、新たに酒の満たされたジョッキが置かれた。
「それでは行きます……スタート!」
 審判に扮した狸の青年がそう言って、ガードンと少女は同時に最初の一杯に口をつけた。

     ◇     ◆     ◇

 勝負が始まってから十数杯目になる酒を飲みながら、ガードンは傍らの少女をちらと見た。少女は特別早いペースでもなく、一定のペースでジョッキを空けている。
「……なんだ、案外いけるクチじゃねぇか」
 傍目で見て分かるほど飲みなれているらしい少女の飲みっぷりに、感心した様子でガードンは言った。
「けど、俺に勝とうなんざ百年早ぇ」
 言い切ると、ガードンはジョッキを空けるペースを早めた。周囲の観客からおお、と声が上がる。
「ねーちゃん、次だ!」
 満たされた酒をほぼ一息で飲み干し、空になったジョッキをテーブルを叩きつけるように置いてガードンは言った。ガードンの声にマリエルはどこか怒ったような表情で、まっすぐこちらに来た。
「うん? どーしたんだねーちゃん」
「もう無いわよ」
「はあ?」
「だからもう無いの! アンタ達が節操無く飲むもんだから、店のお酒が全部無くなったのよ!」
 マリエルの言葉に観客達から一斉に驚きと、落胆の声が漏れる。
 ガードンはカウンターの向こうに立っているソフィアを見た。視線に気付いたソフィアは無言でごめんなさいね、と頭を下げる。
 周囲に落胆したような雰囲気が漂う中、ガードンは舌打ちを一つして、不満そうに呟いた。
「勝負つかず、か。まだまだこれからだってのによ……」
 少女へと向き直り、
「今日のところは引き分けにしといてやる。運が良かったな姉ちゃん」
 少女の方はほっとしたような残念なような、何とも微妙な表情で息をついた。平常時と変わらない顔色から判断するに、彼女の方もまだ余裕があるのだろう。
「アンタもまだ飲み足りなさそうだな……そーだ」
 ガードンはふと思いついた事を少女に告げた。
「このままじゃ寝覚めが悪いからよ、一週間後の今日、再戦としないか?」
 にやりと挑発じみた笑みを浮かべ、
「ま、無理にとは言わないけどな」
 ガードンの言葉に、少女はやや考えて頷いた。
「ええ、分かりました」
 ガードンは少女の返事に口笛を一つ。ノリが良いじゃねえか、と呟き、
「決まりだな。じゃあ一週間後」
 にやりと笑い、続いてマリエルを見てに向き直る。
「と、言う訳だ。その日は酒をたんまり用意して待っててくれや。何杯飲んでも大丈夫なように、よ」
 ガードンの言葉にマリエルは分かったわよ、と怒ったように頷いた。

     ◇     ◆     ◇

 そして、一週間後。
 何処から噂を聞きつけたのか、夕暮れ時のアクアリースホテルには一週間前よりも更に多くの人が訪れている。
「さあ張った張った! ここいらじゃ無敵の大酒飲みガードンと名前も知らない若者の飲み比べ! オッズは現在ガードンがかなり優勢だ! 一口千ゴールドから!」
 ハリセンを持った獅子の若者がホールの一角を占領し、トトカルチョまでが行われている。
 そしてホールの中央、用意された長机にはガードン一人が座り、相手の姿を待っていた。
「あいつ、来ると思います?」
 ガードンの隣にいた青年がガードンに話しかけた。ガードンははっ、と笑って、
「来なかったらタマ無しと笑ってやるだけさ」
 言って、ふと思い出したように、
「そーいや元々タマ無しだったか」
 ガードンの言葉が終わると同時。ドアベルの音を立てて入り口のドアが開いた。酒場に居合わせた全員が注視する中、やってきたのは狐の少女の姿。
「ま、来るとは思っていたがな」
 上機嫌に呟いたガードンの方へと少女は歩いていく。
「お待たせしましたか?」
「いや、いいカンジだ」
 少女の言葉にガードンは笑って自分の隣を指差した。促されるまま、少女が席につく。
「それじゃあつけようぜ、この前の決着をよ」
 ガードンの言葉に少女が頷く。一同が見守る中、二人の前に酒の満たされたジョッキが置かれた。
「スタート!」
 審判風の男の言葉に、二人はほぼ同時にジョッキを手に取り、一杯目を飲み干していく。
「次だ!」
 一息で一杯目を飲みきるなり、ガードンはお代わりを注文する。隣を見ると、少女はまだジョッキの三分の二ほどしか飲みきっていない。
 ――この勢いのまま引き離す。
 ガードンはそう思いながら、猛然と二杯目のジョッキを干しにかかった。


「五十杯目だ!」
 ガードンが飲み干したジョッキを数えていた若者が興奮気味に言った。
「こっちは今四十八杯目を……」
 少女の飲み干したジョッキを数えている若者がそう言っている間に、少女はジョッキに満たされた酒を飲み干し、次のジョッキに手をかけている。
 多くの予想を裏切る均衡した勝負に、観衆達は俄然盛り上がっていた。
 ――思ったより離せてないな。
 周りの喧騒を遠くに聞き、スタート時よりは若干落ちたペースでジョッキの中身を減らしながらガードンは思った。
 ――どうやら簡単には勝たせてくれないらしい。けど、
「その位の方が面白いってもんだ」
 不敵に笑って、ガードンは空になったジョッキを置き、次のジョッキを手に取った。


 飲み比べが開始してから、随分な時間が経過した。
「おい、今何杯目だ?」
「確か……これで百杯目じゃなかったか?」
 観客達が呆然と呟く。飲み干したジョッキの数が百を超えたにも関わらず、依然勝負は続いている。
 そして、この場に来てスタート時から変わらなかった状況が変化していた。
「あれ? あっちは確か……」
「ああ、今百二杯目に取り掛かってる」
 首を傾げた男に、隣にいた男が信じられない、といった表情で相槌を打つ。
 僅かではあるが、少女の飲んだジョッキの数がガードンの飲んだジョッキの数を上回っていた。
「おいおい、マジかよ……」
「まさか、ガードンさんが負けるのか?」
 観客の言葉にバカを言うな、とガードンは心の中で毒づいた。
 確かに相手は自分の想像していたよりも遥かに強かった。だが最後に勝つのは自分だ、こんな女なんぞに負けてたまるか、と。
 そう思うガードンの表情には、しかし確かに焦りの色が浮かんでいた。


 そして、ガードンが百十二杯目のジョッキに取り掛かった時。
「――くっ!」
 突然視界が歪み、ぐるりと回る世界。思わずガードンは飲みかけていたジョッキをテーブルに置き、荒い息をついた。
「く……そ」
 悪態をつき、何とか目の前のジョッキを飲み干そうとする。しかし身体が言う事を聞かないのか、口に含んだ一口がどうしても飲み込めない。
 ガードンは隣を見た。
 少女は細身の身体のどこにそんなに入るのか、百十四杯目になるジョッキを飲み干し終えた。僅かに赤みの差した、しかしまだ余裕の見えるその姿。
 もう僅かにも減らないジョッキの中身と少女を見比べて、ガードンは己の負けを悟る。
「……なあ、一つ聞かせてくれ」
  どうにか口の中の液体を飲み下し、ガードンは少女に声をかけた。少女はガードンを向いて首を傾げる。
「何ですか?」
「アンタの名前だ。……俺に勝った相手の名前くらい、覚えておきたいんでな」
 ガードンの言葉に観衆がどよめいた。対する少女は冷静にわかりました、と微笑んで自分の名を告げる。
「私の名前はエリソン、と言います」
「エリソンだって!?」
 少女の自己紹介に叫び声を上げたのは観客の中にいた若者だ。近くにいた別の男が若者に尋ねる。
「知ってるのか?」
「知ってるも何も……一部じゃ伝説さ。『酒場潰し』のエリソンの名前は」
「……『酒場潰し』はやめて下さい」
 若者の言葉にエリソンと名乗った少女は困ったように笑った。男が若者に続きを促す。
「で、何だよその『酒場潰し』ってのは」
「ある酒場が樽酒一杯飲めたら勘定無料ってキャンペーンをやってたんだ。それに挑戦した女が居て、無理だろうとタカを括ってた連中を嘲笑うかのように樽酒一杯を飲み干したんだ」
 話を聞いていた男が嘘だろ、と漏らすが、若者はまだあるんだ、と話を続ける。
「女は更に飲み続け、ついには酒場中の酒を飲み干した。店中の酒をタダで飲み干された酒場は潰れたって話だ。それで、ついたあだ名が『酒場潰し』」
「……何だ」
 若者の話にガードンはほっとしたような怒ったような表情で溜め息をついた。
「そんなの相手じゃ敵うワケ、ねーじゃねーか」
 喧嘩を売る相手を間違えたか、とも思うが、こんな凄いヤツと戦えて良かったとも思う。
「あなたもなかなか強かったです」
「は、どの口が言いやがる」
 ガードンはにやりと笑って、エリソンへと手にしたジョッキを掲げた。
「俺の負けだよ、『酒場潰し』」
 観客の歓声が爆発したが、既に体力も忍耐も限界だった。そう言った次の瞬間には、ガードンの意識は闇へと引き込まれていた。

     ◇     ◆     ◇

 ガードンが目を覚まして、まず感じたのは頬に当たるテーブルの冷たさだった。
 身体を起こし、辺りを見回す。頭に鈍痛が走ると同時、誰かが気を利かせたのか、ガードンの背にかけられていた毛布がずり落ちた。
 エリソンや観客達が去り、人気のなくなったアクアリースホテルは祭の後のような妙な静けさに包まれていた。
 今何時だろう、と辺りを見回したガードンに、酒場の裏手から出てきたマリエルの姿が目に入った。
「あ、起きたんだ」
 ようやくか、と言った表情でマリエルは言い、それでもカウンター奥に引っ込んでコップを持って戻ってきた。
「はい水」
「……あんがとよ」
 礼を言ってコップを受け取る。一息にコップの中身を全て干すと、身体の隅々に清涼さが染み渡っていくような感覚。
「連中は?」
 バルフェイは飲み比べに居合わせていた人たちの事を尋ねた。
「あの後は凄かったんだから。おごりだからって皆でお祭り騒ぎ。帰ったのは少し前かな」
 言って、マリエルは顔をしかめた。
「後片付け、大変だったんだから」
 そう言ってカウンターへと歩いていったマリエルの言葉にガードンが辺りを見回す。まだ辺りにはクラッカーの紙くずやら、小さいゴミが散らばっていた。
「全く、騒いでるんだったら俺も混ぜろってんだ」
 拗ねたように呟いたガードンが足音に振り向く。奥に行っていたらしいマリエルは手に何かを持っていた。
「で、これがお会計ね」
 そう言ってマリエルが差し出したのは伝票らしい一枚の紙。そう言えば負けた方が全額払うってルールだっけか、と思い出しガードンは何気なく紙を受け取った。
「どれどれ……」
 そう言って覗き込んだ伝票には、

「は?」



『ガードン様
   お食事代  100,000,000G
         アクアリースホテル』



 これだけが書かれていた。
「嘘だろ……?」
 何度も眺め、まさかと思い擦っても透かしても数字は変わらない。
「姉ちゃん、こりゃ何かの冗談だろ?」
「それで合ってるわよ。こっちだって何度も計算したんだから」
 むしろ冗談であって欲しい、という願いの込められた言葉は、しかしマリエルの一言によって脆くも砕かれた。
 だったらこの数字は何の悪夢だと心の中で呟き、ガードンはふとエリソンにつけられた二つ名を思い出した。
「『酒場潰し』か……」
 これだけの量のタダ酒を飲まれては潰れるしかないだろう。ガードンは潰れたという酒場に同情したくなった。
「確かに、大したヤツだよ」
 言って、ガードンは深く、長い溜め息をついた。
 とりあえず、目の前の給仕に言って――否、訊いておかなければならない事が一つ。
「姉ちゃん。一つ、いいか」
「何?」
 振り向き、マリエル。



「……この店、ローンってやってるか?」











 読了いただき、ありがとうございます。
 何となくお酒の絡んだ話が書きたくて、TSの世界で酒の飲める場所って何処だろう?と考えてアクアリースホテルを舞台としました。
 しかし、あのキャラクターのままだと、マリエルって接客業に全く向いてませんね(笑)

 次はもう少しギャグに走った小説を書きたいなぁ、と思いつつ……
 また、次の作品でお会いしましょう。
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  1. 2006/09/18(月) 17:49:49|
  2. 小説|
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